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海水の塩分濃度:場所によって、どれくらいで、どう変わる?

日常生活

海水の塩っぽさは、その中の塩分の存在によるものです。しかし、海水の塩分濃度は場所や深さによって変わります。

この記事では、塩分濃度の分布がどのようになっているのかを探ります。

さらに、海水に塩分が含まれる理由についても説明しています。

 

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海水の塩分濃度はどれくらい?

海水の塩味の主な要因は、ナトリウムイオン(Na+)と塩素イオン(Cl-)の存在です。

世界中の海の塩分濃度は一様ではなく、場所によって異なります。

日本周辺の海水の塩分濃度

日本近辺の海水の塩分濃度はおおよそ3.1~3.8%の間で、平均は約3.5%です。

日本海、オホーツク海、瀬戸内海、太平洋など、日本近海の塩分濃度は平均的な3.3~3.4%とやや低いです。

この塩分濃度は、海面から200mまでの表層水域で測定されたものです。

海水の表層の塩分濃度は、主に海面の蒸発量と降雨量のバランスによって決まります。

蒸発量が多い場合、海水の水分が減少し塩分濃度が上昇します。反対に、降雨量が多い場合は水分が増加し塩分濃度が下がります。

北回帰線(北緯23度27分)と南回帰線(南緯23度27分)付近の海水の塩分濃度が最も高い傾向にあります。これは、これらの地域が日射量が多く蒸発量が高い一方で、降雨量が少ないためです。

緯度が高くなるほど、つまり北極や南極に近づくほど、日射量が減少し蒸発量が下がるため塩分濃度も低下します。北極と南極では塩分濃度が特に低く、特に北極は大陸の河川や氷河、北極海の氷が溶けた水が流れ込むことで、塩分濃度が3.3%以下になります。

赤道付近では、日射量と降雨量が多く、塩分濃度は3.5%程度になります。

海水の塩分濃度と緯度の関係は、下記の図で示されています。

海水の塩分濃度は、通常パーミル(‰)単位で表されます。パーミルは1000分の1を意味し、百分率の10倍に相当します。例えば、3.5%の塩分濃度は35‰と表されます。

 

大西洋はなぜ太平洋より塩分濃度が高いのか

大西洋と太平洋の塩分濃度を比較すると、大西洋の方が太平洋より約0.1~0.2%程度高いことがわかります。

この違いは、大気の循環パターンに大きく影響されています。

世界的に見ると、1年を通じて赤道付近では東から西への貿易風が吹き、中緯度では西から東への偏西風が主流です。

大西洋赤道付近での蒸発によって生じた水蒸気は、貿易風によって山が少ないパナマ地域を通り、太平洋へと運ばれます。

一方で、北太平洋から偏西風に乗って運ばれた水蒸気は、北米のロッキー山脈で雨として降り、ほとんどが太平洋へ戻されません。

その結果、大気を介して大西洋から太平洋へ水分が輸送され、太平洋の海水が薄められ、塩分濃度が低くなる一方、大西洋では塩分濃度が高くなるとされています。

世界各地の海面における塩分濃度の分布は、下記のようになります。

地域 塩分濃度
北極海 3.3%以下
赤道付近 3.5%程度
日本近海 3.1~3.8%
大西洋 3.5%以上
太平洋 3.3~3.4%

 

海の深さによる塩分濃度の変化

水深が約1000メートルを超える深海では、降雨、蒸発、氷の融解や形成など、塩分濃度に影響を及ぼす要因がほとんど存在しません。その結果、ほぼ全域で塩分濃度が一定の3.5%を維持しています。

水深を縦軸、塩分濃度を横軸としたグラフにおいては、高緯度域と低緯度域での塩分濃度の変化が左右対称になることが観察されます。

水深が深くなるにつれて、高緯度域では塩分濃度が急激に上昇し3.5%に近づき、低緯度域では逆に急激に下降し3.5%に近づく傾向があります。

こちらが、水深を縦軸に、塩分濃度を横軸にしたグラフです。

このグラフでは、高緯度域(青色線)と低緯度域(赤色線)での海水の塩分濃度の変化が示されています。水深が増加するにつれて、高緯度域では塩分濃度が急激に上昇し3.5%に近づく一方、低緯度域では逆に急激に下降して3.5%に近づくことが観察できます。水深1000メートルを超えると、両緯度域ともに塩分濃度がほぼ3.5%に安定しています。

 

なぜ海水に塩分が含まれるのか?

海水の塩分は主に河川や火山活動によって供給されています。

陸上に降った雨や地下水は、岩石や土壌に浸透する際に、岩石や土壌に含まれる元素と化学反応を起こし、これらの元素が水に溶け込みます。

これらの水は河川を通じて海に流れ込みます。川の水に溶け込んだ元素は非常に微量で、飲んでも塩辛い味はしません。

何億年もの長い時間をかけて、これら微量の元素が海に流れ込み、蓄積されてきました。

海水の塩分の主成分である塩素イオンとナトリウムイオンは、これらのプロセスを通じて海水に含まれるようになり、海の塩辛さの原因となっています。

河川に加えて、火山活動も海に元素を供給しています。火山から放出される塩素イオンや硫酸イオンなどの火山ガスは、最終的に海に到達します。

 

海水の塩分濃度の時間による変化

海水の塩分は河川や火山活動によって長い年月をかけて蓄積されてきました。このため、年々海水の塩分濃度が高まっていると考えがちですが、実際には塩分濃度は一定の平衡状態を保っています。

海水に追加される塩分は、他の物質との吸着や沈殿によって取り除かれることもあります。このプロセスにより、海水の塩分濃度は追加される量と除去される量のバランスが取れ、増加も減少もしない安定した状態にあります。

この平衡状態は、地球の海洋が長期間にわたって維持している複雑なバランスの一例と言えます。

 

まとめ

海水が塩辛いのは、主に塩化ナトリウムが溶け込んでいるからです。

海水の海面近くの海域では、塩分濃度は3.1~3.8%の範囲にあり、平均して約3.5%です。この塩分濃度は、主に海面での蒸発量と降水量によって決まります。

水深が約1000メートルより深い海域では、降雨や蒸発など塩分濃度に影響を与える要因がほとんどないため、塩分濃度はほぼ一定の約3.5%を保っています。

海水の塩分は、長い年月をかけて河川水や火山活動によって供給されてきました。海水の塩分濃度はこれらの要因と他のプロセスによって安定した平衡状態を保っています。これにより、地球の海洋はその独特の塩分濃度を長期間にわたって維持しているのです。

 

 

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