たとえば、メールの返信、読みかけの本、片付けようと思っていた引き出し、洗濯物の取り込み……。やる気がゼロなわけではないのに、なぜか「今じゃなくてもいいか」と先延ばししてしまい、気づけば時間だけが過ぎていく——そんな日が積み重なると、なんとなく自己嫌悪やストレスもたまっていきます。
でも、どうして「あとでやろう」と思ったことは“ほぼやらない”ままになってしまうのでしょうか?やる気がないのとはちょっと違う、だけど行動に移せない——そこには、私たちの脳や心理の仕組みが関係しているのです。
この記事では、「あとでやろう」が“実行されない理由”と、その“対処法”について、やさしく解説していきます。気づいた瞬間からすぐに使えるヒントも紹介しますので、「やりたいけど手がつかない…」という自分を少しでも変えてみたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
なぜ人は「あとでやろう」と言ってしまうのか
さらに、「あとでやれば今は快適でいられる」と一時的な安心感が生まれることも理由の一つ。やらない罪悪感を先送りにし、今この瞬間のストレスを減らそうとする自己防衛のようなものでもあります。
加えて、「あとでやる」は一見ポジティブな選択肢のように見える点もやっかいです。未来の自分が元気で、集中力があって、やる気満々だと信じてしまう「楽観的バイアス」が働くからです。しかし、現実はというと、未来の自分もきっと同じように「あとでやろう」と言っている可能性が高いのです。
このように、「あとでやろう」と口にするのは決して怠け心からではなく、人間の脳や心理のごく自然な働きによるものなのです。だからこそ、自分を責める必要はありませんが、同時にその仕組みを理解しておくことで、行動を変えるヒントが見えてきます。
「あとでやろう」が実行されない理由
まず第一に、「あとで」と言っている時点で、具体的な時間やタイミングを設定していないことが多い、という点が挙げられます。「あとで」は非常にあいまいな言葉で、今でもなく、いつでもない。その結果、行動のきっかけが自動的にはやってこず、つい忘れたり、先延ばしにしてしまったりするのです。
次に、「先延ばし」には心理的なハードルが隠れています。やるべきことに取りかかるには、“エネルギー”が必要です。ちょっと面倒、気が進まない、難しそう……というタスクには、最初の一歩を踏み出す力が必要ですが、「あとでやろう」と言うことでそのハードルを一時的にスルーしているに過ぎません。
また、「あとでやる」は未来の自分に“タスクを丸投げする行為”でもあります。頭の中では「やらなきゃ」と意識していても、時間が経つほどに緊急性が下がり、重要性が薄れ、「今やる理由」がどんどん小さくなっていきます。
さらに、一度先延ばししてしまったタスクには“心理的重み”がつきます。「まだやってない」「そろそろやらなきゃ」という思いがプレッシャーになり、ますます動きにくくなるという悪循環に陥ってしまうのです。
このように、「あとでやろう」が実行されない背景には、単なる怠惰ではなく、脳や行動のしくみ、心理的なブレーキが複雑に絡み合っているのです。
やる気に頼らない!動ける仕組みを作るコツ
まずおすすめなのが、「5分だけやる」ルール。どんなに面倒なことでも、「5分だけならやってみようかな」と思えることが多いものです。いざ始めてみると、案外そのまま続けられてしまったり、「もう少しやってしまおうか」となることもよくあります。大切なのは、“やる気が出るのを待つ”のではなく、“やる気が出なくても始めていい”と自分に許すこと。
また、「あとでやること」は具体的な時間と一緒にセットで決めると効果がアップします。たとえば「午後3時にメールを返す」「洗濯物は夕食後に取り込む」など、あらかじめ行動の“トリガー(引き金)”を決めておくと、思い出しやすく、実行にもつながりやすくなります。
もうひとつのコツは、「小さく分ける」こと。タスクが大きすぎると「時間があるときにまとめてやろう」となりがちですが、逆に「5分でできる部分だけをやる」と決めると、ぐっとハードルが下がります。「本棚を片付ける」ではなく、「今日は1段目だけ」「今日は3冊だけ処分する」といった細分化が有効です。
仕組みを作るということは、つまり「やらない理由」をあらかじめ潰しておくこと。自分の性格や生活リズムに合った方法を見つけていくことが、継続的な行動への第一歩になります。
気づいた瞬間がベストタイミング
人は、「気づいた瞬間」に脳の中でやるべきことが鮮明に浮かんでいる状態です。このタイミングを逃すと、数分後には別のことに気を取られてしまい、行動のきっかけを失ってしまいます。
たとえば、「あ、あの書類出さなきゃ」と思った瞬間に、1分でもいいから書類に手を伸ばす。メールの返信を思い出したら、すぐにアプリを開いて下書きだけでも始める——この“1分だけ着手する”ことが、行動のスイッチになるのです。
このとき大事なのは、「やり終える」ことを目的にしないこと。完璧を目指すのではなく、「とりあえず始める」ことだけに集中する。それだけで、脳が“始めたことは続けたくなる”という性質(作業興奮)を発動させてくれるのです。
また、「やる気が出ない=行動できない」ではないという認識を持つことも大切です。行動すれば自然とやる気が後からついてくることも多いため、まず“気づいたら1分動く”という小さな習慣を意識してみると、意外なほどすんなりと物事が片付いていきます。
「あとでやろう」と思う前に、「今ちょっとだけやる」。この意識の切り替えが、先延ばし癖を乗り越えるカギになるのです。
まとめ
だからこそ、やる気に頼らずに行動を促す“仕組み”を作ることが大切です。「5分だけやる」「気づいたらすぐ1分動く」「あとでやるなら時間とセットで決める」——こうした小さな工夫が、行動のハードルを下げ、先延ばしを防ぐカギになります。
「あとで」は、ただの“未定”です。でも、「今ちょっとだけやる」は“実行”です。完璧を目指さず、動き始めることに価値を置いてみましょう。
自分の行動パターンを知り、向き合い、少しずつ変えていくことで、「やらなきゃいけないこと」に押しつぶされる日々から抜け出すヒントが見えてくるはずです。
まずは今日、「あとで」と思ったその瞬間に、“ちょっとだけ”やってみませんか?