多種多様な食品が缶詰として市場に出回っています。これには魚介類(ツナ、カニ、イワシ、サバなど)、畜産品(例えばコンビーフ)、そして野菜(トマトやコーンなど)や果物(ミカンやモモなど)が含まれます。
缶詰はその長期保存性から、災害時の備蓄食料としても重要な役割を果たしています。
本記事では、缶詰がどうして長期に渡って保存できるのか、その発明者は誰なのか、そして缶詰がどのような進化を遂げてきたのかを探ります。
缶詰が長期保存できる技術の秘密
缶詰は、密封された食品を加熱殺菌し、長期間保存できるようにする技術を用いています。これは、JAS法や食品衛生法の基準に則って行われます。
食品の腐敗は主に微生物によって引き起こされます。微生物の増殖は、特定の条件下で急速に進行することが知られています。これらの条件には、微生物の汚染、適切な温度、酸素の存在、及び水分が含まれます。
缶詰を製造する際、まずは調理済みの食品を缶に詰め、蓋をして、缶内の空気を抜きます。空気を抜く理由は、加熱殺菌時の缶の変形防止、缶内の腐食防止、そして食品の品質(色、香り、味、栄養素)の維持にあります。
缶の蓋と側面は「二重巻き締め」という方法で密封されます。この方法では、蓋と缶の両縁をフック状にして、相互に巻き込むことで密封します。
密封後の缶詰は、微生物を死滅させ、腐敗を防ぎ、長期保存を可能にするために加熱殺菌されます。加熱の温度と時間は食品によって異なり、例えば酸が多い果物や果汁、ジャムなどは100℃以下の温度で短時間で殺菌が可能です。一方で、野菜や魚、肉などは100℃以上で長時間の加熱が必要です。殺菌後は品質の劣化を防ぐために速やかに水冷却されます。
このように、缶詰の長期保存性の秘密は、密封と加熱殺菌のプロセスにあります。これにより、常温での食品の長期保存が可能となっています。
缶詰の賞味期限と品質維持
缶詰に賞味期限が設定されるようになったのは1995年からで、これは食品衛生法に基づくものです。この変更により、製造年月日だけでなく、賞味期限も缶詰に表示されるようになりました。
賞味期限の設定には、各商品の色、香り、栄養成分などの品質特性を考慮した貯蔵試験が関わっています。これらの試験を通じて、商品が美味しく食べられる期間を設定し、それに基づいて賞味期限が決定されます。多くの缶詰では製造から3年後を賞味期限として設定していることが一般的です。
理論上、缶詰は缶が密封されている限り、非常に長い間食べられます。実際に、130年前に英国で製造された牛肉や野菜の缶詰が味が悪くないと評価された事例もあります。ただし、味の質は時間が経過するにつれて徐々に落ちる可能性があります。
重要な点は、一度缶を開けたら、その保存性は失われ、通常の生ものと同様に扱われるべきであるということです。開封後は、できるだけ早く食べることが推奨されます。
缶詰の発明と歴史的発展
缶詰の基本原理は、フランスの料理人、ニコラ・アペールによって1804年に発見されました。アペールは、固い乾燥食品や塩漬け食品ではなく、普段の食事と変わらない質の高い保存食を作ることを目指していました。彼は料理を熱いうちにビンに詰め、コルク栓で密封した後に湯で加熱し、この方法で食品を殺菌して保存することを発見しました。
この新しい保存食は、ナポレオンが率いるフランス軍に採用され、軍の食糧事情を劇的に改善しました。これは、当時ヨーロッパ各国に戦線を拡大していたナポレオンの兵士たちの士気を高めるのに貢献したとされています。
しかし、ビンは重く、割れやすいという欠点がありました。そのため、1810年にイギリスでブリキを使用した缶詰が発明され、これが現在の缶詰の原型となりました。
缶詰の技術は1821年にアメリカ合衆国に伝わり、その後さらに普及しました。
日本では、1871年に長崎でフランス人の指導のもとに初めてイワシの油漬け缶詰が製造されたのが始まりです。その後、1877年には明治政府が北海道でサケの缶詰工場を稼働させるなど、日本国内でも缶詰の生産が広がりました。このようにして、缶詰は国際的な保存食としてその地位を確立しました。
缶切りの発明とその進化
缶詰が発明されてから長い間、その開封方法は非常に原始的でした。缶切りの発明まで、ユーザーはハンマーとノミを使って缶を叩いて開けたり、ナイフや銃剣を使って缶をこじ開けたり、さらには銃で撃って開けるといった方法に頼っていました。これらの方法は非常に危険で、不便なものでした。
缶詰が発明されてから48年後の1858年、ついにアメリカで最初の缶切りが発明されました。この初期の缶切りは、缶を引き回しながら開ける方式でした。この発明により、缶詰の利便性が大幅に向上しました。
その後、約10年後にはさらなる進化を遂げ、缶の縁を切るタイプの缶切りが登場しました。これにより、缶詰の開封がさらに簡単かつ安全に行えるようになりました。
現代では、プルタブ方式の缶詰が一般的になり、缶切りを使用する機会は減少しています。しかし、缶切りの発明は缶詰の普及と利用の拡大において重要な役割を果たしました。
まとめ
1. 缶詰の長期保存の仕組み
- 缶詰は食品を密封後に加熱殺菌処理することで長期保存を可能にします。
- 主な保存原理は、微生物の増殖を防ぐための適切な温度管理、酸素の除去、水分のコントロールにあります。
- 二重巻き締め法による密封と加熱殺菌により、缶詰は常温で長期間保存が可能です。
2. 缶詰の賞味期限
- 1995年以降、食品衛生法により賞味期限の表示が義務付けられました。
- 賞味期限は、品質特性に基づいた貯蔵試験によって設定され、多くの場合は製造から3年後とされます。
- 賞味期限を過ぎた缶詰も密封が保たれていれば食べられますが、開封後は速やかに消費する必要があります。
3. 缶詰の発明と歴史
- 缶詰の原理は1804年にフランスの料理人ニコラ・アペールによって発見されました。
- 1810年にイギリスでブリキ製の缶詰が発明され、1821年にアメリカへ伝わりました。
- 日本では1871年に初めてイワシの油漬け缶詰が製造され、1877年にはサケの缶詰工場が北海道で稼働しました。
4. 缶切りの発明
- 最初の缶切りは1858年にアメリカで発明され、当初は引き回して開ける方式でした。
- その約10年後に缶の縁を切る方式の缶切りが登場しました。
- 現在はプルタブ方式の缶詰が多く、缶切りの使用頻度は減少していますが、その発明は缶詰の普及に貢献しました。
このように、缶詰はその便利さと保存性の高さから、多くの場面で重宝されてきました。その長い歴史と進化を通じて、缶詰は災害時の非常食から日常
の食卓まで、幅広い用途で使用されるようになりました。缶詰の技術は、食品の保存と配送を大きく変え、今日の食文化に大きな影響を与えています。また、缶切りの発明とプルタブ方式の導入は、缶詰の利便性を大幅に向上させました。これらの革新的な進歩は、缶詰が長い間、世界中の多くの人々に愛され続ける理由の一つです。